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- 代表理事挨拶
残雪をまとった岩手山が展望できる寒さも緩んだ盛岡において開催された2023年3月9日の第28回日本災害医学会社員総会での理事選挙の結果を受け、新理事会におきまして本学会代表理事に指名して頂きました。どうぞよろしくお願いいたします。
本学会は1995年、阪神・淡路大震災での教訓を契機として発足して以来、一貫して地震・風水害などの自然災害およびテロを含める人為災害への医療対応について、研究・情報発信を進めて参りました。本学会の設立までは、過去の災害の経験が次の災害対応に十分生かされず、組織的な対応も行われませんでした。
人間の身体には、免疫という仕組みが備わっており、過去の感染の経験が免疫細胞等に蓄えられ、いざというときは他の免疫細胞を刺激増殖させて対処するしくみが生まれながらに備わっている、むしろ備わっていない動物は絶滅してきたのかもしれません。
災害医学・災害医療で言うならば、「災害を経験した本学会員が、研究や教育、委員会活動や学術集会を通して、知識技能を蓄え、そしていざというときに相互に連携しながら組織的に対応できるしくみを実践すること、これにより多くの命と健康を守ること」が本学会の役割であるとも考えられます。また、免疫は母親から子どもへ伝えられるように、「過去・現在の知識技能が他の人に伝染して、未来に伝わること」も重要であり、本年の学術集会のテーマが「人材育成」であった所以です。
私は、新評議員会で所信表明として3つのお約束をいたしました。
1つ目は、評議員(社員)の皆様に活躍していただくことです。
委員会活動、学術集会プログラム企画、日本災害医学会誌の編集査読などに積極的に関与でき、それらの活動が評価される体制を整備していきたいと思います。
2つ目は、学会員に対して、学習や研究、仕事やライフスタイルにとって有益な情報を提供し、会員間の交流を促進します。具体的には研究において共同研究者としてふさわしい会員との間を橋渡し、英文論文作成や投稿の技術的サポート、目的に合わせた研修会や講師の紹介などが考えられます。災害に対する知識・研究実績や実際の災害経験が豊富な会員が在籍する本学会の強みを最大限に生かせるのではと思います。
3つめは、非学会員に対して災害の知識を深めるための啓発活動を行います。
災害セミナー、多数傷病者への医療対応標準化トレーニングコース(MCLS)、MCLS-CBRNEコース、大量殺傷型テロセミナー、大量殺傷型テロ対応病院コース、災害薬事研修(PhDLS)、地域保健・福祉の災害対応標準化コース(BHELP)などを開発しすでに全国各地で研修会が開催され、インストラクターも数多く誕生しています。現在、災害時「食べる」の連携についての研修会や災害時精神心理的対応についての研修会を開発中です。これまでに上述の諸研修会のテキストや日本DMAT標準テキストを編集出版し災害の意識・技能の標準化を推進してきました。これらの改訂作業も行う予定です。多くの非学会員が学会活動に参画していることが本学会の大きな特徴で、非学会員に対しても啓発活動を引き続き行っていきます。
新型コロナ感染症もまもなく5類に格下げとなる予定で、今までの活動制限も春の時代に向かおうとしています。盛岡で見た岩手山の「雪解け」のように本学会活動をますます発展させていく所存です。是非とも、皆様のご支援を賜りたく思います。