第13回日本集団災害医学会総会開催に当たって


 日本集団災害医学会が設立(当時は集団災害医療研究会)されたのは阪神淡路大震災の復興がようやく途につきかけた平成8年です。
その後順調な発展をとげて平成11年には日本集団災害医学会と改組・改称され、現在では会員数1,000余名の、わが国でも有数の医学系学術団体に成長してきました。

 トリアージ、Confined Space Medicine(瓦礫の下の医療)、クラッシュ症候群など災害時に特有の医療に関しては、本学会設立当時は、ごく一部の災害に興味のある
医師の間で知られていたに過ぎませんが、今日ではさまざまな災害医療に関する研修会などを通して多くの医療関係者の知るところとなっています。
また災害拠点病院の整備、災害医療支援チーム(DMAT)の設置など制度面の充実も図られてきました。

 いろいろ厳しい批判やご意見はあるとは思いますが、この間に発生した中越地震や福知山線脱線転覆事故、そのほか各地で散見される中小規模の災害への対応を見ると、
やはり阪神淡路大震災の教訓、それ以後の災害医療への関心の深まりと制度の充実はそれなりの効果が見られていると思われ、これはまた、この間に本学会が災害医療の
分野で先頭を切って活動してきた成果でもあります。

 本学会の活動が一定の成果を挙げてきたとはいえ、災害で失われる命をどこまで減らせるか、災害による人的被害をどこまで減らせるか、そのためには何をすべきか、
と言う観点からは取り組むべき課題はまだまだ山積しており、第13回学術集会を担当するに当たっては、これら未解決の課題に取り組む気持ちでプログラムを組み立てました。

 災害医療教育、災害とメディカルコントロール、災害急性期における看護の役割、災害時の保健所・保健センターの役割、災害時の死亡について考える、さらに災害時の
後方支援や災害医療従事者の作業環境(アメニティ)の改善など、どちらかといえば議論を避けてきた分野も含めて災害医療における新たな視点を盛り込みました。

 また本学会で検討されたノウハウは学会員だけが知っていればよいというものではなく、医師、看護師、救急隊員、行政職その他、なるべく多くの災害医療関係者が共有すべき
ものであり、今回の学会では本学会会員のみならず、広く関係者の方々にも声をかけさせていただきました。

 これら各セッションの企画のねらいと趣旨をご理解の上、多数の演題のご応募を期待いたしますとともに、多くの関係者の皆様が学会にご参加の上討論に参加されることを
希望いたします。本学会での討論されたことが、災害医学・災害医療の新たな発展につながるものと期待しております。

 つくば市は関東平野の真ん中にあり、内陸性の気候のため学会が開催される2月は思いのほか冷え込みが厳しいこともあります。一方、つくばエクスプレスの開通で
都心からわずか45分と大変便利になりました。つくばエクスプレスの車窓から眺める雄大な関東平野の冬景色を楽しみながらお越しいただければ幸いです。

 平成20年2月10−11日に皆様とつくばでお目にかかれることを楽しみにしております。
 どうかお気をつけてお越しください。



第13回日本集団災害医学会会長
帝京平成大学救急救命士コース 大橋教良