第13回日本集団災害医学会総会
各セッションの趣旨とねらい



【新潟県中越沖地震関連の演題について】

 過日の新潟県中越沖地震での災害医療に活躍された個人・団体からの報告は今後の災害医療の発展に非常に貴重なものです。
 一般演題のほか、シンポジウム、パネルディスカッション、ワークショップなどで関連するそれぞれのセッションに新潟県中越沖地震の貴重な体験・教訓を多数ご報告ください。





【一般演題】
 各種災害派遣、病院における多数傷病者受け入れ、自施設の災害対策と教育・訓練などから得られた教訓、災害医療に関する調査研究、その他災害医療に関する演題を募集します。また医師のみならず看護師、薬剤師、栄養士、その他病院事務官、救急隊員、行政職など、災害に関連する各分野の皆様からの演題応募を歓迎いたします。


【シンポジウム、パネルディスカッション、ワークショップ】
 シンポ、パネル、ワークショップでは議論の方向性をつけるために、一部の演者は主催者側で指定いたしますので、あらかじめご了承ください。


シンポジウム1: 災害医療教育(公募)
 医師や看護師、救急救命士、その他、災害現場で活動するそれぞれの医療関係者に対する災害医療教育に関して、いまだ一定の見解がありません。しかし、この問題は将来の日本の災害医療の質を左右する重要な因子となっています。本シンポジウムでは、医師や看護師の養成課程での災害医療教育のカリキュラム、現任者向けの各種災害医療研修コース、各機関や各自治体の研修コース、国レベルの研修コースなど、それぞれの現状と問題点、災害医療教育のあるべき姿などをディスカッションしたいと思います。


シンポジウム2:災害医療におけるメディカルコントロール(公募)
 災害時に、消防と医療の連携が重要であることは言うまでもありません。なかでもトリアージ、現場救護所での処置、医療機関への振り分け、CSM(がれきの下の医療)など災害時の病院前医療は、言い換えれば災害時のon-line MCそのものです。また各地域MCにおける災害時プロトコール作成、合同災害訓練、災害医療勉強会などは、病院前災害医療におけるoff-line MCといえます。
全国にMC協議会が設置され、心肺停止や重症外傷などの病院前医療に大きな進歩がみられていますが、それらに続いて地震などの大規模自然災害や列車事故などの大規模集団災害に適切に対処するためには、on-line、off-lineを含めた災害医療におけるメディカルコントロールについて検討することは非常に重要なことと思われます。



シンポジウム3:災害急性期における看護の役割(公募)
 災害時における看護師の役割の重要性はいうまでもありません。しかし具体的な活動内容はDMAT隊員、現場救護所派遣、病院での多数患者受入れ、避難所の医療、国際救援など多岐にわたります。大規模災害では、自施設にたどり着けない状況下での地域活動といったこともあるかもしれません。また自然災害と列車事故のような大規模集団災害では、行うべきことは当然異なります。
本シンポジウムでは、自然災害から大規模集団災害まで様々な災害の状況下で看護師がどのようにかかわるべきか、何が出来て、何が出来ないかといった観点から、特に災害急性期における看護とはなにかについてディスカッションを深めます。



パネルディスカッション1:災害時の死亡について考える:検案からご遺族のフォローまで(公募)
 災害医療はできる限り多数の命を救うことが目的ですが、一方救命できない命が必ず存在するのもまた事実です。わが国ではこれまで、この災害時の死亡に関して、災害医療を担当する側、あるいは救援する側からの議論は全くなかったといっても過言ではありません。
本パネルディスカッションでは、トリアージにおける黒タックの意味、大規模災害における死体検案と身元確認、遺体安置所における対応、エンバーミング、遺族のフォロー、その他これまであまり議論される機会がなかった、災害時の死亡に関して多方面から検討します。



パネルディスカッション2:災害時の健康危機管理と保健所・保健センターの役割(公募)
 保健所・保健センターは、大規模災害時の地域における健康危機管理の中心的存在とされていますが、どのような災害で、どのような時期に、何をするか、それに対してどのような準備が必要か、という具体的な事柄については一定の見解がありません。そのために保健所・保健センターの関係者自体に、ある種の戸惑いが見られるのも事実です。これまでに培われた伝染病、食中毒など健康危機管理に関する一定のノウハウと、医療(病院、医師会)、消防、警察、災害対策本部など関係諸機関との連携の中で、大規模災害時に保健所・保健センターがどのような役割を果たすかを議論することは、大変有意義であると考えられます。


ワークショップ1:DMATの運用の現状と問題点(公募)
 日本DMATはすでに200チーム以上が訓練を終了しました。日本DMATとは別に独自にDMATを導入する積極的な自体体がある一方、具体的な運用方法すら未定の自治体もあるなど、地域間の温度差が大きいのが現状です。DMAT発足後に発生した各種災害でのDMAT待機・出動経験などの実績を踏まえ、指示命令系統、隊員の安全確保、通信連絡・移動手段、後方支援、隊員の補充と訓練、DMAT同士の連携など、実効性のあるDMAT運用に際しての諸問題点について検討する必要があります。


ワークショップ2:災害拠点病院の運用の現状と問題点(公募)
 災害拠点病院は全国に500以上指定されていますが、多数の災害拠点病院が関係する大災害はそれほど頻度が高くないため、このままでは制度が形骸化する恐れすら危惧されます。災害拠点病院の機能を維持するためには、定期的な研修会や訓練、資器材の備蓄・購入が必要であり、そのためには各病院での予算の確保も必要などなど相当の努力が必要なうえ、災害拠点病院自体では解決できない問題も多々あります。
災害拠点病院同士の連携、地域防災計画における各地の災害拠点病院の位置づけ、列車事故や航空機事故など、自然災害以外の大規模集団災害時の災害拠点病院の位置づけ、その他災害拠点病院の制度の運用に際して積み残されている諸問題点について検討する必要があると思われます。



ワークショップ3:災害時の備蓄と後方支援(公募)
 DMATその他災害現場への医療班派遣、避難所への医療班派遣など、スムースな災害医療活動を行うには、装備、備蓄、通信、搬送、情報収集、関係機関相互の調整など膨大な後方支援業務が必要となります。 
そればかりか、多数の患者が受診する病院自体でも、救急外来や病棟などの現場に対する適切な後方支援業務がないと現場が混乱します。わが国では、災害時の後方支援は、これまでは各施設で経験的に行われているにすぎません。ライフラインや物的・人的資源が著しく制限された災害時に真に実効性のある後方支援を行うには、何をどのようにすべきか、について平時より検討しておく必要があります。



ワークショップ4:災害医療従事者のアメニティ(作業環境)の向上(公募)
 災害医療に従事する者のアメニティ向上に関する議論は、これまで、どちらかと言えばタブー視されてきた感があります。しかし過労状態にならず、モチベーションを維持し、一定期間災害医療活動に専念するためには、救援者自身に対する食事、休息、要員の交代、惨事ストレス対策などの心のケア、といったサービスが不可欠です。派遣チームが災害現場や避難所で活動する際に、あるいは多数の患者で混乱する病院の体制を構築する際に、救援者側のアメニティ(作業環境)の向上をどのように考えたらよいか、という議論が今後、重要になると思われます。


ワークショップ5:非医療者を災害医療の現場にどのような形で取り込むか(公募)
 福知山線の脱線・転覆事故では近隣の住民の方の活躍が報道されていました。大規模自然災害のフェーズ0における、自助、互助の精神は大変重要で、非医療者といえども貴重な戦力になる可能性があります。一方安全管理はどうするか、そもそも誰の指示で動くのか、医療機関や消防、警察など災害医療に関係する諸機関が一般市民相手の指示を果たして出せるものなのか? 統一した指示が出せないと戦力にならないどころか本来の業務を妨げる要因になりかねない部分もあります。非医療者を災害医療の現場にどのような形で取り込むかは、今後、重要な課題となる可能性があります。