日本集団災害医学会
「鳥取県西部地震関連災害医療計画に関する特別委員会」 報告書

  2000年鳥取県西部地震における医療機関の被害と対応
Damage and Response of the Medical Facilities in Tottori-ken-Seibu Earthquake, 2000

【委員会メンバ−】

和藤幸弘(金沢医科大学救急医学講座)
中山伸一(神戸大学災害救急医学講座)
石原 晋(県立広島病院救命救急センタ−)
寺師 栄 (大阪府立千里救命救急センタ−)

【日程】(これまで)

2000年10月7日−8日:被災地視察および予備調査
2000年11月10日:調査内容および日程に関する会議(東京)
2000年11月16日−19日:被災地において情報収集

【調査】

2000年10月7日−8日 Scout survey
 被災地視察(米子市、境港市、西伯町、日野町、溝口町、会見町、日南町、岸本町、江府町)および予備調査(鳥取県西部広域行政管理組合消防局、米子消防署、江府消防署、鳥取大学医学部付属病院)
             
2000年11月16日−19日
 〔調査(訪問および情報収集)〕
    ・鳥取大学医学部付属病院(救急部、手術部、集中治療部、高次治療病棟)
    ・西伯病院
    ・日野病院
    ・鳥取県西部医師会
    ・鳥取県西部広域行政管理組合消防局
 〔視察〕・米子市、境港市、西伯町、日南町、日野町

【調査結果の要約】

 〔General information〕
 被災日時:2000年10月6日13時30分頃
 被災地:鳥取県西部、島根県東部、岡山県北部
 震 源 :鳥取県西部鎌倉山付近
      北緯35.3°、東経133.4°
      Depth:10km
 地震の強さ:Magnitude:7.3 ( Richter scale)
       最大震度6強(気象庁震度階)鳥取県西部を中心に岡山県北部、島
       根県東部

〔被害〕

1) 死傷者 2) 物的被害  
  死者 なし   住家全開     178棟
  負傷者  合計 138名         半壊   1,151棟
  鳥取県 97名     一部破損 7,300棟
  岡山県 18名   非住家公共建物  165棟
  島根県 11名   文教施設     610棟
  大阪府  4名   道路     1,036箇所
  広島県  3名   がけ崩れ     150箇所
  香川県  2名   断水     2,549戸
  兵庫県  1名   電気         2戸
  和歌山県 1名   電話       136回線
  山口県  1名   ガス         5戸

〔委員会が確認した医療機関の被害と対応〕
1. 鳥取大学医学部付属病院
   停電 手術部、病棟(5階−8階)→非常電源に切り替わる
      外来、集中治療部等、医療機器に被害なし。
      手術室では術式の変更、手術延期を行った。
   復帰 16時30分頃
   患者受け入れ 西伯病院より24名、日野病院より
2. 西伯町国民健康保険西伯病院(西伯郡西伯町)
          ベッド数:204床(191名入院中)
   被害 3階天井より水漏れ、停電、医療配管損傷、渡り廊下に亀裂、段差発
      生。
   対応 地震より3分後(13:33)全患者避難誘導開始。
      病院駐車場に全患者(191名)を避難させ(約45分)、次に、約300m
      はなれた、公民館に入院患者を一時避難。重症患者(計41名)を鳥取
      大学医学部付属病院、国立米子病院など7つの病院へ転送。24名の軽
      症患者を帰宅させた(18:00に完了)。
   水道復旧(18:30)
   医療ガス復旧(22:00)
   翌日より病室の復旧開始。入院患者を病棟へ再度入室。
3. 日野病院(日野郡日野町)ベッド数:130床(75名入院中)
   被害 停電(全館、2時間)自家発電は手術室のみ(地震発生時手術なし)。
   入院患者11名を日南病院へ転送。その他の入院患者63名を近くの中学校へ
   避難。
4. 鳥取県済生会境港病院(境港市)
   建物(柱、壁)にせん断ひび割れ、医療配管損傷。
   85床が使用不能、外来6診察室が使用不能となる。
 鳥取県西部地区の医療施設(対象:114施設)は69施設に被害が発生した。建物、設備の主な被害は停電、給水タンク・パイプの破損、棚上物品の落下破損、窓枠・窓ガラスの破損、地盤沈下による建物の傾斜、壁亀裂などであった。
 入院患者、外来患者への被害はいずれの施設でも発生しなかった。


〔消防による対応〕
 消防による救助は計5件(5名)で合計73名の隊員を投入した。
 地震による負傷者の救急搬送:12名
   (137名は家人・隣人が搬送)

〔その他の被害〕
 鉄道JR伯備線:10箇所以上に土砂崩れ、落石などの被害を受けたが列車事故は発生しなかった。

【考察】

 比較的規模の大きな地震で、医療施設や住宅などに大きな被害が発生しながら人的被害が少なかった要因は、
1) 列車事故のような被害の連鎖が発生しなかったこと
2) 人的被害が軽微であったこと
・ 倒壊家屋に人がいなかった(発生時間)
・ 生存空間が保たれていた
3) 被害を受けた医療機関で、地震時の対応計画を整備していた病院は少なく、 
   また職員にマニュアルは徹底していなかったにもかかわらず、現場で迅速かつ的確な対応が行われたこと
4) 病院の収容能力、消防の救助、搬送能力が圧倒されなかったこと
などが考えられた。

【結語】

 末筆ながら、貴重な時間を割いて情報を頂いたり、案内して頂いた鳥取県西部消防の皆様、西伯病院、日野病院、鳥取大学の皆様に感謝するとともに、日本集団災害医学会理事会の対応にも謝意を表します。
 以上、今回の調査の概略を記述いたしましたが、現在、資料を整理中であり、また、日程、経済的支援が可能なら、今回、直接調査できなかった行政機関、医療機関などの調査を行いたいと考えます。

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